自分の気持ちや相手の気持ちを理解しようとするとき、あなたは何をたよりにしますか?多くの人が「なんとなく」とか「感覚で」自分や相手の状態を推し量っているのではないでしょうか。こころのありようについて考える時に、ヒントを与えてくれるツールとして、自我状態の概念をご紹介します。
自我状態とは
交流分析では思考、感情、行動の元になるこころの状態を、親(Parent)、成人(Adult)、子ども(Child)の3つのパートでで表します。人には3つの自我状態が備わっていて、時と場合に応じて入れ替わりながら、その人の態度や言動に影響を与えます。
同じ人でも時によって厳しい、優しい、冷静、無邪気、従順、反抗的などの様々な様子を見せるのは、自我状態の機能によると考えられます。自分の自我状態を理解することは、他者との交流で起こる問題の解決につながるヒントとなります。
ⓅⒶⒸの各パートには生まれてから現在までに得た膨大な情報がファイルされ、その人らしさを構成しています。
P(親 Parent)の自我状態
Ⓟの自我状態には親や祖父母などの養育者の考え方、感じ方、行動を取り入れます。
・家庭や社会のルールを教える
・面倒を見たり、世話をしたりする
・ほめたり、叱ったりする
・道徳観、価値観、偏見を持つ
など、養育者の態度を見たり、感じたりして、Ⓟの自我状態が形成されていくのです。1歳ころから形成が始まり、人生経験を重ねるにつれて変化していきます。
A(成人Adult)の自我状態
Ⓐの自我状態は経験、知識、情報、分析、物事の手順などを論理的に判断する役割を担っていて、一生涯発達していきます。具体的には
・今ここで起こっている事柄を客観的にとらえる
・計画的に行動する
・合理的、論理的に思考する
など、その場にふさわしい行動をとるための調整を行います。
C(子どもChild)の自我状態
Ⓒの自我状態は子どもの頃と同じような考え方、感じ方、行動をしている心の状態で、幼少期に形成されます。成長してからも子供のように振舞う時は©が働いているのです。例えば
・気持ちを率直に表現する
・自発的に行動する
・自分の欲求や感情を否定して人の意に沿う
・思い通りにならないと不相応に怒る
・人が望むことをわざとしない
など、大人になってからも子供時代と同じように感じたり、考えたり、行動します。
生きていくためにはPACのどの自我状態も有用で、どれが良いとか悪いという事ではありません。上記はほんの一例で、ファイルの中身は膨大。肯定的なものや否定的なもの、様々な情報が入り交じっていることでしょう。今までの人生で、どのようなメッセージをファイルをしてきたのか? それをどのように活かしているのか?私も折に触れ、棚卸で整理したり、新しいアイデアを仕入れたりのチェックはしているつもりです。自我状態のメンテナンスは、年齢に応じて、一生続けて行く作業だと思っています。
なぜ、そのような手間をかけるのかというと、「今ここ」の自我状態に気づく事で、自分が自分らしくいられるようになったからです。加えて、人との関わり方にも良い影響があります。もちろん、自我状態だけ学んで、そのようになれるわけではありませんが、自分探求のきっかけとしてはかなり便利なツールだと実感しています。
あなたは自我状態にどのようなファイルをお持ちですか?
大林 田園子
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