人事・労務管理のエキスパート |
今では「犬の飼い主さんを心理的にサポートする」という活動をしていますが、実のところ20年前は犬が大の苦手、飼うなんてとんでもないと思っていました。犬が寄ってきてハァハァという息遣いが聞こえるだけでも、フリーズ!犬を撫でたり、抱っこしたりする経験はもちろんありませんでした。
では、なぜ、よりによって大型犬ラブラドールの雄を飼うことになってしまったのか?当時、犬好きの友達から「ラブの子犬が生まれているから飼わない?大林家にはぴったりだと思うよ。」と強く勧められていました。私は「とんでもない!無理!無理!」と断っていました。最後は、その友達の5歳の女の子に、「ラブの赤ちゃん見たいから、いっしょに行って〜」とせがまれ、「ホントに見に行くのを付き合うだけだからね。飼わないから。」と念を押し、子犬を繁殖したお宅へ主人と一緒に連れて行かれることに。
8頭生まれた子犬のうち7頭は既に行く先が決まっていて、最後まで残っていた元気いっぱいのちっちゃなモフモフが、いきなり主人の足元から胸元にダーっと駆け上がってきて、彼が抱っこした瞬間に、そのコが家族の一員となることが決定したのでした。
主人は目に♡♡を飛ばせて、「一瞬でなついてくるなんてこれは運命の出会いだよ!」すっかり、やられてしまいました。なぜか私の犬への苦手意識も瞬時にも吹っ飛んでいました。多分、その子犬は、主人でなくても誰が行ってもダーっと駆け上がるようなエネルギーに溢れたワンコなのでした。
今から思うと、ラブラドールがどんな犬で、成犬になったときの大きさや運動量も全く知らずに受け入れを決めてしまうなんて、呆れたオバカな飼い主です。犬の神様、本当にごめんなさいっ!!
大地と名付けた子犬とのHAPPYな時間はあっという間に過ぎ去り、天使のようだった大地がムクムクと大きくなり、6ヶ月を過ぎたころからは私にとってはモンスターのように見えてきました。身長150cm足らずの私が32kgの元気過ぎるラブラドールを連れて歩くには、力では到底かないません。
犬の成長に私の学習が追いつかず、とびつき、引っ張り、吠え、他の犬への過剰反応、誤飲、破壊、食糞などなど、人間から見たら(イヌにとってはごく当たり前の反応でも)問題のオンパレード。本来、犬にも人にも楽しい時間であるはずのお散歩は恐怖の時間と化し、一瞬の引っ張りに踏ん張って耐えるために、毎日全身が筋肉痛に。この犬は2足歩行かと思えるほど、ぴょんぴょんと私に飛びついていたので、歯が引っかかり服はビリビリ。
本やしつけ教室、出張トレーニング、イベント参加など、自分でできることは精一杯取り組んだにも関わらず、問題の解消にはほど遠く、育犬に疲れ果て、私はうつ寸前にまで精神的に追い込まれました。
唯一の安らぎの時間は、大地がぐっすり眠っているすきに、そーっと近づいて、起こさぬようにうっすらと撫でること。涙がポロポロと落ちてきました。愛おしさと疎ましさがせめぎ合う3年間だったと記憶しています。
そんな私に、あるトレーナーさんが「今努力していることはすぐには効果が出なくても、諦めずに続ければ、絶対後から効いてくるから、大丈夫。」と勇気づけてくれました。
転機が訪れたのは、自分の心のありようが、大地の行動を左右していることに気づいたことです。私がドキドキしていると大地も不安定な行動が目立ち、逆に自信を持って対処できると大地も落ち着いていられる。お散歩で恐怖におびえる飼い主に、引きつった顔で「ツケ」とか「オスワリ」とか言われても、安心して従う訳にはいきませんよね。
犬のしつけの前に、人間力アップが必要だったのです。自分と向き合う取り組みは、じわじわと大地との絆を深めてくれました。
今では数々の失敗や挫折も大切で愛おしいものです。WAGTIMEBLOGでは、失敗から学んだ事、ちょっとイイ出来事などを、こころのありようと絡めてお伝えしていきます。何か一つでもお役に立つ事があれば幸いです。
犬たちは、飼い主のこころを映し出してくれる鏡のような存在です。犬と一緒だからこそ人として気づき、成長できることがたくさんあります。伴侶動物がいるという強力なリソースを生かしながら、人間として成長できるのは、犬飼いの醍醐味だと思います。
大林 田園子